本記事の内容を以下のイベントで話します。YouTube Liveでオンラインです。
【天下一武道会裏話】3000人集客のためにやったことなど話します - connpass
はじめに
去る2024年2月1日に『第1回 AWSコスト削減天下一武道会』という勉強会を開催しました。 このイベントはわたくし、西谷が個人で企画して運営したイベントですが最終的な申し込み数は3692人とかなりの規模になります。 これがどのくらいの数かと言うと昨年Connpassで募集されたイベントで1番のものが日本ディープラーニング協会主催のイベントでちょうどGPT4が発表されて大注目を浴びたタイミングで開催されたものであり、4900人以上とすごい数になっています。さすがにこれには及ばず、2番目に多かったQiitaカンファレンス春の2963人よりは多いとそんな感じです。
とはいえ、実情としては当初からこんな数を集客するつもりはなかったです。ですが集客のためにいくつか考えていた施策がはまりまくった結果でもあるのでその辺りがもしかしたら他の人の参考になるかもしれないと思いお伝えします。
ただし、もちろん全てのイベントでこれがハマるとは言えません。ですが、自分はこれまでに前職時代も含めて商業・コミュニティイベントで大きめなものをやってくる中で得た知見によるものでもあるので多少は再現性のあるものではないかと思います。
今回は当初は100人程度の集客を目指していたこと、個人でやるイベントということもあり有償での広告などは最初から検討していません。
複数日のイベントのほうが集客的にはメリットありますが今回は単発かつたった2.5時間のイベントです。 そうです、あくまでも企業や団体によるカンファレンスイベントではなく個人が主催する勉強会にすぎないことを忘れてはいけません。ですので身の丈にあった施策が必要になります。
また、今回は運営メンバーとしては配信チームを除いて誰も置いていません。 これは個人イベントかつオフラインでの人数が100名程度の集客と規模が大きくはないので、会場も大規模な場所を借りる必要がなく、そのためのスポンサーも不要だったからできたことかと思います。実績のないイベントでスポンサーパッケージを考えて、スポンサー集めをして諸々の調整をするのはかなり手間です。
まず、大事なこと
個人的にこの手のイベントの集客で1番 大事なこととして2つあると考えています。1つめが『企画力』です。これを言っては元も子もないという声も聞こえてきそうですが。
企画力というのはつまりどれだけ興味関心をひけて話題になれるものを企画できるかというところになります。
そして2つめが『認知』です。つまりいかに認知を得るかということです。いくら企画が良くてもそれが人の目に触れて認知を得ていなければ集客には繋がりません。なので多くの企業イベントでは広告を打つわけです。手っ取り早くお金で解決できるので。ですが、今回の場合には先述の通りそんなお金はないので広告という手段は使えません。というわけで必然的にいかにお金をかけずに認知を得ていくかということに知恵を絞る必要があります。
どちらもどれだけ考えるか、です。
イベント開催告知まで
では早速企画当初の話からしていきます。まず、このイベントを企画し始めたのは12月初めくらいなのですが、実際に開催告知をしたのが世間がクリスマスで賑わっている12/25です。
ここで最初にやったこととして、実はすでにやることを決めていて仕込みも概ね終わっているにも関わらずあえて匂わせの投稿をしています。
今度AWSのコスト削減をテーマにしたイベントやろうと思うんだけど、登壇者を探してるので我こそはっていう人は削減額を添えてDMして欲しいw
— Keisuke Nishitani (@Keisuke69) 2023年12月14日
これはシンプルに企画の方向性に対する世間の反応を見たわけですが、割と好感触で早速リプやDMで反応ももらえたのでやはりいけると確信しました。
いけると確信したのと何人か登壇したいという意見もあったことなどをもとに内容を微調整した後、10日後に正式に開催告知をしました。
最初の投稿時点で既にある程度仕込んでいたのでスピーカーなども早めに決められていますし、温まっているうちに開催告知できています。
実はこういった「勢いでイベント開催する感」は反応が良い傾向があります。理由ははっきりとはわかりませんがこれまでもそういった実体験があります。これに関しては実際には自分自身が「思いつきドリブン」で物事を実行することも多いので本当に勢いだけでやってるケースも多々あるのですが。
なお、クリエイティブの制作をお願いした相手のスケジュールの問題もあったのですが、完成を待つことなくこの時点ではOGPなど「あえて」つけない戦略を取りました。これは先の勢い感を失わないようになるだけ早くというのと、クリエイティブもネタっぽくいくのは決めていたのでそれができたこと自体をネタに宣伝できるからです。
この時点ではコロナ禍を経てオフラインでの集客は厳しくなっている中で100名程度集めたいと考えていました。今回お借りしたタイミーさんの会場はキャパが70くらいという話でしたので歩留まりを6割くらいと考えると100名くらいは集めないと寂しいことになるからです。実際には会場に詰める形で100人入れるとして歩留まりを半分で計算して200人くらいは集めたいなと思っていましたし、そこまでなら勝算がありました。
また、オフラインイベントは初速が全てです。これはコロナ禍を経て変わったという話もたまに聞くものの個人的にはこの感触は変わっていません。なので今回も初速でドーンといった状態を作ってからあとはチョロチョロ増やす戦略を取ろうとしていました。というか広告でも出さない限りこの戦略しか取りようがないのではないかと思います。
さて、そのためには初速、つまり初日でいかに跳ねさせるかということです。これに関してはここ最近、イベントに限らず月曜10時のアナウンスは反応がいいという体感がありました。コロナ禍以前は8時だったのですがコロナ禍以降10時くらいになった気がします。というわけで今回もここを告知ターゲットにします。だから12/25 (月)だったのです。
また当初はあえてのオフライン開催のみにすることで熱量高めの参加者が集まる濃厚な会にしようと考えていた一方でハイブリッド開催の可能性も頭の片隅にはありました。ここに関しては実際に想定以上に人が集まったら考えればいいとひとまず棚上げしました。
開催告知初日
さて、初日の告知については以下のような時系列です。
- 09:55 最初の告知
これはconnpassでイベント公開した際の投稿をそのまま投稿しています
第1回 AWSコスト削減 天下一武道会 を公開しました! https://t.co/M9Tb7ybPZC #costdown_2024
— Keisuke Nishitani (@Keisuke69) 2023年12月25日
- 10:00 5分後に先の投稿を引用する形で自分の言葉で再度告知
このときは開催経緯と内容に軽く触れるようにしました。
少し先の開催ですが以前にXで投稿したコスト削減に関するミートアップを実際にやることにしました。
— Keisuke Nishitani (@Keisuke69) 2023年12月25日
スピーカーはセブンリッチグループのDELTA丹さんとスニダンのSODAHayashiさんです。
LTも3枠ほど募集するので我こそは!って人は応募お願いします。
会場はタイミーさんの会場をお借りします! https://t.co/lBnZMcpdD7
- 10:30 このときは強めのワードで中身を紹介するような形で再度告知
結構えぐい額のコスト削減ネタが話されるはずなのでAWS使ってる全エンジニアが話聞いたほうがいい。拡散もよろしくお願いします。
— Keisuke Nishitani (@Keisuke69) 2023年12月25日
第1回 AWSコスト削減 天下一武道会 https://t.co/wjsEhXKJ9E #costdown_2024
月曜10時に照準を合わせた上でいくつか内容を変えつつ集中的に投稿しました。ここで順調に増え出すかどうかでその後の流れが変わります。
今回はここからは順調に増えて告知2時間後の12時くらいの段階でほぼ満席となりました。そしてそのことをまた投稿します。タイミング的にここからは多くの人がランチタイムに入るためフィーバータイムと言えます。結果的にフィーバータイム終了の13時時点で200名。これはもう勝ち確定です。ハイブリッドが頭をよぎります。でもここでもあえてハイブリッドにはせず飢餓感を誘う形にしました。 中途半端なモメンタムでアナウンスすることで微妙な感じになることを避けたかったのです。
ここからはconnpassの仕組み的に一定の間は勝手に加速度的に伸びていくので放置しておきましたが勢いは止まらず18時の段階で400名を超えたのでそれをまた投稿しつつハイブリッド開催を匂わせます。本来的にはハイブリッド開催は好きではないです。考えることとやることが一気に増えるので。とはいえ申し込み数が4倍になっているので期待感を持たせてリテンションしておきます。
このあたりでさらに大きく跳ねさせることになったのがITmediaでの記事掲載です。これはその時点で既に話題となりつつあったことから取り上げたいとの打診がありました。ある程度ハイブリッドを視野入れ始めていたこともあり、その集客のためにもちろんOKします。記事タイトルとかは特に指定などしてませんが完全に意図がハマっています(後述)。
私の削減率は93%です──「AWSコスト削減 天下一武道会」開催 - ITmedia NEWS https://t.co/XQuqzHzu6U
— Keisuke Nishitani (@Keisuke69) 2023年12月25日
その結果、23時の段階で500人突破します。そしてこれも投稿します。 この時点でハイブリッド開催することに決めました。
2日目
さて、2日目です。満を持してハイブリッド開催の告知を行います。ただし具体的には何も決まってません。そしてこれも10時に合わせて投稿します。また、単にハイブリッドにするよーというアナウンスだけでは弱いので拡散されることを多少期待して強めのワードとともに行います。
『タダなのに あると思うな オンライン』
— Keisuke Nishitani (@Keisuke69) 2023年12月26日
の姿勢でやってきましたが600人超えたのでハイブリッドにします。
ただし、具体的なことはまだ何も決めてないです。
というわけで、まずは最強の配信チームを組成します。
このイベントの配信周りお手伝いしてもいいよ!って方はリプもしくはDMください! https://t.co/yeeYNPFDOa
また、2日目以降は数字ネタを考えて繰り返し投稿します。毎回内容は少し変えます。コメントだったりネタっぽくしたり。例えば実際には受験シーズンということもあって中学受験の倍率より高い、などと投稿してます。
そして、この日15時の時点でconnpassのイベントランキング1位になりました。当然ながらいいトピックなのでこれもスクショとともに投稿します。なお、この時点では750人でした。
次に、19時に満を持してOGP作ってもらったというのを投稿します(ただしこれは事情があってツイ消し。単なるミスw)。あわせてオフラインをキャンセルした数よりオンラインの増え方の方が多いという人数の増え方に関するネタも一緒に投稿。この時点で1000人を超えました。
3日目以降
ここまでである程度の集客を達成したのでここからは数字ネタとともに1日1回くらいを目処に投稿していきます。
ネタとしては例えば以下のようなものです。
- LTの倍率
- 画像に関して再告知
- 過去の他イベントの集客数を意識したトピック
ちなみに年末年始はどうせ伸びないので放置するつもりでした。世間的には1/4くらいかから徐々に再開するものの、1/3にあと1人で2000人に到達するという投稿以外はしていません。再度申し込みが本格化するのは多くの人が稼働を始めた1/9からと見込んでいました。
そして実際にそこから2週間近くは多い時で100人/日くらいのペースで増えていきました。もちろん折に触れ内容を変えては投稿を繰り返します。
最終的にイベント当日は350人くらい増えて結果として3692人の申し込みとなりました。
そんな感じで開催された当日のイベントの様子がこちらです。配信に関する話もそれはそれでいろいろあるけどそれはまた別の機会に。
企画に関して
大事なことの一つに『企画力』と書きました。企画とは何も内容に関してだけではありません。人の耳目を集めるようなワードなど全方位的に考える必要があります。
今回のイベントに関しては久しぶりにやるという個人的事情もあり以下を意識していました。
- タイムリーなテーマ(コスト削減)
- キャッチーなタイトル(みんな大好き天下一武道会)
- 巨人の肩に乗る(AWSをタイトルに含める)
- 強めのワード(煽る内容を丁寧に)
- 印象に残るパンチライン(節約は技術!削減は芸術!)
- 人が食いつきそうなネタ(DBの戦闘力をイメージしたコスト削減率)
僕とイベント企画したことがある方はこの辺り拘りがちなことをご存知かと思います。
なお、タイトルに『AWS』をつけることに関してはAWSなイベントになってしまうことの懸念もありましたが以下の理由でつけました。
- 『クラウド』だとぼけるし、GoogleやAzureを対象に含めたところで集客観点では弱い
- メインの登壇内容がともにAWSがメイン
- 世の中的にはAWSの事例が圧倒的に多く、熟しているからこそコスト削減の話に興味あるはずという仮説
また、『天下一武道会』というワードを持ってきたのは有名かつネタとして好きな人も多いドラゴンボール、そしてイベントテーマ的に単なる事例集とするより面白そうな雰囲気を与えるためです。『第1回』とつけてるのは天下一武道会というフォーマットを意識しただけで実はシリーズ化することはそれほど考えていませんでした。この『第1回』までを含めてイベントタイトルです。つまり『さかなクン』さんがクンまで含めて名前なのと同じです。
そして天下一武道会ってのもあって戦闘力のようなイメージでコスト削減率というパラメータを設定します。これも話題にされることを狙ってです。
つまり、内容がちゃんとしているのは大前提の上で人にシェアされやすい、話題にされやすい箱を作ることが企画としては大事だと考えています。
認知に関して
上の時系列の話でお気づきの方も多いと思いますが認知向上施策としては今回はSNSだけです。広告は出してません。
企画という箱ができた後の集客は認知が全てですので繰り返し告知して、人目に触れさせることが大事です。
ただし代わり映えのない単なる告知はうざいので毎回ネタを変えます。それもいくつかは事前に用意しておきます。今回で言えば、OGP、LT決定、サブドメイン、ハイブリッド開催決定は事前にある程度用意していたものです。事前に用意するのはストーリーを作れるからです。なお、LT枠を3枠から増やしたのですがそれも実は折込済みでした。途中で増やしたらいい投稿ネタになるから、と。
また、今回に限っては申し込み人数に関する投稿はインパクトがあったのでそれも毎回投稿するように途中からしました。普通にイベントページ見たら載ってる数字なんですが同じ数字が見れるようになっていても見ないと、言われないと人は気づきません。なので投稿しています。
サブドメイン(no1.connpass.com)についてもこれも投稿ネタとして使うために最初から狙って取っています。
あとはSNS、特にXの特性を活かして他の人が言及してくれたものはなるだけリポストしています。つまり、全力で人に頼りました。
自分のXでのフォロワー数が人より少し多めなことが有利に働いた可能性はもちろんあります。というか、幸いなことにそういう状況なのでXを最大限に活用する、つまりXを軸にした集客施策を取ることにしたとも言えます。
ここに関しては今からフォロワーを増やすのは現実的ではないので巨人の肩に乗るのがいいと思います。つまり誰かフォロワー多い人にリポストなり言及してもらえるように頑張るのです。巨人の肩に乗るの大事です。
このように今回はSNSでの投稿を通じた告知メインで行くと決めたので個人ブログなどで『開催します』といったブログは用意しませんでした。
ちなみにConnpass上でのグラフがこちらです。
赤い棒グラフが申込者の数でして、初速がすべてというのがわかると思います。何気に公開から3日で最終的な結果の55%を集めています。また、参照元としてはX経由が圧倒的に多く、全体の32%となっています。次にダイレクトの27%です。この結果からも施策がうまく行ったことがわかります。
最後に
今回の内容はあくまでも今回のイベントのために行った施策です。自分がこれまでやったイベントで効果的だと思った施策でも今回のイベントには合わないと思ってやっていないことも当然多数あります。それはイベントのテーマ、傘の大きさや予算状況などによって変わってくるからです。
また、自分が開催するイベントが常に大規模に集客するイベントばかりではありません。先日行ったキャンプ×エンジニアのイベントなどのように参加者間との交流なども目的の場合は人数絞った方がいいです。あとはテーマです。人が集まるテーマかどうかというのを考えるのは大事です。逆に企業主催のイベントで集客数のターゲットが決まっている場合はそれを意識した企画を練る必要があるのです。
自分はマーケターでもないので本職の人からするといろいろツッコミどころが多いかもしれません。そもそもイベントも定期的に開催したりとかはしていませんし、開催するものも基本的にはエンジニア軸だけです。とはいえ前職時代にも大小多くのイベントを企画してきてるので困ってる人は@Keisuke69までDMくれれば相談に乗れるかもしれません。